作品の感想

「スパイ・ゲーム」の感想。駆け引きに瞬く間に引き込まれていく映画

1992年の映画『リバー・ランズ・スルー・イット』ではロバート・レッドフォードが監督、ブラッド・ピットが俳優という立場であったが、2001年の映画『スパイ・ゲーム』では俳優同士での顔合わせがついに実現した。メガホンを握ったのは『トップガン』のヒットで知られるトニー・スコットだ。

1991年。ベルリンの壁崩壊から2年が経ち、そして湾岸戦争が勃発したこの年、1人の男が引退の時を迎えようとしていた。彼の名はネイサン・ミュアーだ。30年間、CIA工作員として数多くの諜報活動を行い、その最前線に立ってきた男だ。その彼の元にあるニュースが飛び込んできた。トム・ビショップが中国当局に拘束されたというのだ。そしてCIA上層部にとって頭が痛いことは、大統領の中国訪問が控えているということだった。
ミュアーはビショップに関する情報を小出しにしながらCIA上層部と渡り合っていくうちに、ビショップが国益のために見殺しにされることを知る。
「君がヘマをしたり捕まったりしても、助けになど行かないぞ」、とかつてミュアーはビショップに非情にも言い放ったが、ミュアーはビショップ救出のためにある作戦を実行に移していくのであった。
映画はCIA本部の会議室が主な舞台だ。ミュアーはCIA上層部に取り囲まれている。そのような中で自分が知るビショップに関する情報を小出しにしながら彼らと渡り合っていく。その表情が芝居だという保証はなく、口から出てくる言葉が真実であるとは限らない。迫りくるタイムリミットと会議室という密室が緊張感を高めていく。そして回想式で語られていくのはミュアーがビショップをいかにして工作員へと育て上げていく過程だ。戦争の最中にあるベトナムで出会い、CIA工作員にスカウトして、手塩にかけてビショップを育て上げていく様子がテンポよく描かれていく。
スパイものと聞けばすぐに思い浮かべるのは「007シリーズ」のような派手なアクション、美しい女性とのロマンス、強烈な個性を持った敵、一度は行ってみたい世界中の国々だが、実際の諜報活動は決して報われることのない誰にも見られることのない仕事である。

ネイサン・ミュアーを演じたのはロバート・レッドフォードだ。CIA上層部と緊張感あふれる駆け引きを繰り広げていくが、まるでチェスを楽しんでいるかのようだ。情報を小出しにしながら相手の表情の奥深くを読む。映画を見ている者はレッドフォード演じるミュアーとなってCIA上層部の駆け引きに瞬く間に引き込まれていく。